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ねぎとろ丼

ねぎとろ丼

最高の贈り物をありがとう

※百合的絡みがあります。ご容赦を。



   『最高の贈り物にありがとう』

 外の花に水をやる。落ち葉等も綺麗に掃いて、玄関周りを掃除しておかないと。
 魔理沙を呼んで、二人だけのお祝いをするのだ。
 今日は魔理沙と初めて会った日だから。魔理沙と会って一年の記念日だから。
 昨日のうちに今晩一緒に食べる晩御飯の材料なんかも用意してある。
 勿論、プレゼントも。きっと気に入ってくれるであろう、マジックアイテムを。
 
 お昼が過ぎてから、魔理沙の家へ向かった。家へ招待するために。
 しかし魔理沙は不在。出かけているようである。
 霊夢のところか、パチュリーのところへ行ったのだろうか。
 どうしよう。魔理沙の行きそうなところを探し回ってもいいが、他人に二人きりでいたい等と思われるのはどうも癪である。
 だから私は魔理沙の家の前で帰りを待つことにした。魔理沙には勝手で悪いが、家にいない魔理沙が悪いんだ。
 幸い、今日の天気は晴天。今の季節は初秋。気温もあまり暑くはない。
 外にいても快適な気温。ここで空を眺めたり人形を操って遊んだりして、時間を潰そう。

 地面に座り込んで、空を流れていく白い雲を観察して彼女を待った。
 柔らかそうで、美味しそうで、綿飴みたいなふわふわしたもの。魔理沙と一緒に綿飴を食べたいと思った。

 地面を見つめていると、蟻が列を成して歩いていた。
 ただ何かをするわけでもなく、こうして魔理沙と成り行きを見ていたいと思った。

 上海人形を操り、蓬莱人形にも糸を伸ばして人形同士に挨拶させてみた。
「コンニチハ、私上海」
「コンニチハ、上海ちゃん。私の名前は蓬莱よ」
 芸をしても誰かからコメントをもらえないというのは寂しい。
 魔理沙、早く帰ってきなさいよ。切ないじゃない。

 陽が落ちて、夕方に。そして完全に太陽が沈んで夜へ。これだけ待っても、魔理沙は帰ってこなかった。
 もしかすれば魔理沙はお泊り気分で遊びに出かけたのかもしれない。そんな考えが思いついた。
 だから、ここでどれだけ待ってもそれは意味のないことで。魔理沙自身は今日がどんな日であるのかどうでもいいことで。
 魔理沙にとって、今日は私と初めて会った日という認識は無くて。
 つまり私一人で盛り上がっているということ。
 帰ろう。帰って、一人でひっそりと魔理沙にお礼だけ言って、もう寝よう。
 悲しいのか、切ないのか、空しいのか。胸の中に色んな感情が、混ざり合っている。ただ一つ感じるのはそれらが渦巻くせいでとても気持ち悪いこと。
 
 自分の家に近づくと、玄関先に誰かがいるのが見えた。魔理沙だ。ドアの前で座り込んでいる。
 もしかして、魔理沙から私の家に来ていた? もしそうだというのなら、行き違いだったということになる。
 急いで寄りかかってみると、家の前で寝ていた。待ちくたびれたのだろう。
 魔理沙が握りこぶしを作っている。何か持っているのだろうか。
 肩を揺すって起こしてみると、慌てて起き上がる魔理沙。びっくりして、しりもちをついた。
「ア、アリス! 大丈夫か? どうして家にいなかったんだよ?」
 魔理沙に手を貸してもらって、起き上がる。手を触れ合っただけで、少しドキドキしてしまった。
「わたしはずっとアリスの家の前で待ってたんだぜ?」
「そ、それは私も言いたいわよ! 私だってずっと魔理沙の家で待ってたんだから……」
 張り合おうとして、途端に恥ずかしくなった。俯いて、何も言えなくなった。
「なあ、アリス」
 魔理沙に呼ばれて、顔を上げた。満面の笑顔で、精一杯はにかんでみせる彼女の顔。
「今日、何の日か知ってるか?」
「──何よ。魔理沙、知ってたの?」
「知らないわけないだろ。な、なんてって……アリスと初めて……」
「会った日だから……」
「……」
「……」 
 なんだ。魔理沙も覚えていてくれてたんじゃないか。今日がどんな日か。
 魔理沙の握りこぶしはまだ開かれない。
 どんなプレゼントなのか期待しながら、魔理沙を家に誘った。
 早速お茶を用意し、適当にくつろいでくれるよう言った。
「ねぇ、魔理沙。晩御飯、これからシチューでも用意しようと思うんだけど……」
「是非いただくぜ。どれ、私も一緒に手伝うからさ」
「そ、そう。……じゃあ、一緒に作りましょうか」
「お安い御用だ」
 野菜を切ったり、お肉を用意したり、スープを作ったり。
 一緒に材料を鍋に放り込むとき、また手が当たって一瞬硬直してしまう。
 魔理沙も同様に恥ずかしいのか、私達二人目を合わせて苦笑い。
「パンでも焼く? それともご飯がいい? あ、ご飯切らしちゃってる」
「ああ、いいぜ。たまには洋食もいいだろ」
 時間は遅いけど、アクを取りながらシチューを煮込む。
 その間、お茶をしながらお互いのプレゼントを交換することにした。
 こういうことはご飯を済ませてからのほうがいいのだけど、時間も遅いし仕方ないだろう。
 魔理沙がポケットから握りこぶしを抜き出して、それを開いた。
 そこには、小さくて真っ赤なリボンが一結び。
「へへ、わたしのお古だけど……アリスに、似合うかなって。ずっと握ってたから、くしゃくしゃになっちゃったけど」
 私はその贈り物をガラス細工のように扱い、自分の手に取った。
 嬉しさのあまり、自然と顔が綻ぶ。
「えへへ。魔理沙、ありがとう」
「て、照れるじゃないか……。どれ、つけてやるよ」
「え?」
 魔理沙がリボンを取り、私から見て右の横髪へ結びつける。
「これでわたしとお揃いだぜ。かわいいじゃないか」
「……嬉しい。本当にありがとう、魔理沙」
「よ、よせやい……」
 モジモジと、顔を赤くして目を伏せる魔理沙。恥ずかしがるその姿は生粋の少女らしくて、とてもかわいく思った。
「じゃあ、私からのプレゼント。はい」
 ポケットから小さな箱を取り出し、魔理沙に手渡した。
「開けてみて、魔理沙」
「言われなくても開けちゃうんだぜ」
 パカっと気持ちのいい音がして開封される。魔理沙が箱の中からそれを取り出し、自分の目の前まで持っていった。
 それは銀色に輝くリング、指輪。恋人同士、夫婦でつけるようなもの。
「ア、アリス……これは……」
「香霖堂に頼んでおいたものなのよ。気に入って、もらえるかしら……」
 魔理沙は早速薬指に嵌めた。私の左手を見せる。
「へへ、こっちもお揃いであるのか」
「うん。これからもずっとお揃いで、一緒にいられたらいいな。なんて……」
 突如、魔理沙が飛び掛ってきた。抱きしめるように、応じる。
「アリス! 無茶苦茶嬉しいんだぜ! う、嬉しすぎて……泣いてしまいそうだけど……」
「魔理沙……嬉しい。私の胸で良かったら、一杯泣いて」
「アリス、好きなんだぜ」
「魔理沙のこと、愛してる」

 泡を吹き出す鍋の火を止めて、アツアツのシチューを皿に盛りつけてテーブルに並べた。
 湿気を含んで少し硬くなった丸いパンをシチューにつけながら、二人で食べた。
 折角の新しいお洒落リボンにつかないよう、注意しながら。
 彼女から、新しい魔法の発見について話してくれた。それは胸が時めくような、魔理沙の恋の魔法。
 食後には葡萄酒を開けて、眠れない深夜を過ごした。
 私が考えた新しい人形劇を披露すると、魔理沙は手を痛がるほどの拍手をしてくれた。
 お酒がなくなると、二人一緒で一つのベッドで寝ることにした。
 魔理沙の息がかかるほど彼女が近い距離にいるせいで、胸の高鳴りは止まらない。
 彼女にとっても同じなのか、先ほどからあまり喋らない。
「アリス」
「何、魔理沙」
「いや、その……キス、してみてもいいかな? なんちゃって……」
「いいよ。魔理沙、目を閉じて」
「ん。こうか?」
 目と閉じ、無防備な彼女の唇を私は奪った。ちょっと胸が締め付けられる思いがして、目を開けてしまう。
 魔理沙も驚いて目を見開くが、落ち着くと再び目を閉じた。
 そのまま、二人して夢の中へ。次に目が覚めたときは、目の前に魔理沙の愛くるしい顔があった。
「おはようなんだぜ、アリス」
 魔理沙が挨拶すると、目覚めのキスを迫られた。
「これでお相子だ」
 恥ずかしそうに、頬を赤らめてそんなことを言うものだから思わず抱きしめてしまった。
 魔理沙の髪についた、石鹸の臭いが心地よかった。

 朝食に昨日の残りを温めて、食べた。一晩寝かせたせいか、魔理沙と口付けしたせいか、二人で作ったシチューは昨日より美味しくなっていた。
 食事が終わると、魔理沙は帰る準備を始める。
「どこか行っちゃうの?」
「悪いな、アリス。今日はパチュリーのところへ行かないといけなんだ」
 パチュリー。その名前を聞いて、少し苛立つ。なんだろう。これが嫉妬なのだろうか。
「なあに、この指輪……自慢してきてやるんだぜ」
「そう……。じゃあ、晩御飯用意して待ってる……」
「頼んだぜ。じゃあ、行ってくる」
 出かけ前にも、もう一度接吻。今度はどちらかが求めるのではなく、お互いに求め合うキス。
 それは心の中がとても熱く、温まるものだった。
 箒に跨る彼女を見送った。さて、今夜は魔理沙のためにどんな料理を作って迎えようか。
 私達の愛はまだまだ小さい。これから大きくしていくのだから。

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